2021/6/18(金)
#1117 僕たちはあと何回カウンタを回せるだろう
らくがきにっき

 当サイトに長らく使用していた忍者カウンターがサービスを終了していた。

 前回の日記を更新している時に気が付いた。他の忍者ツール自体はまだサービスを提供しているが、カウンタについては今年の2月末に終了したらしい。(気付くのが遅すぎる点はご容赦頂きたい)
 今設置しているカウンタは別のサービスで新しく取得し直したものだ。

 今までカウンタの存在が当たり前だったので、サービス終了は突然のことで驚いた。昨今ホームページスペースや掲示板などのサービス終了はよく耳にしていたが、カウンタにもサービス終了があったとは。急な訃報を受け取ったような心境だ。

 カウンタを提供しているサービスは忍者ツール以外にも存在する。しかし新しいカウンタを探してみて分かったが、ここ数年、多くのカウンタがサービスを終了している。考えてみれば無理もない。需要の減少は明らかだ。

 良い機会なので、今回は「カウンタ」というテーマで思うままに書き綴ってみたい。


 ホームページの元祖ステータス

 初期カウンタ


 カウンタ、アクセスカウンタ。2000年代初頭、個人が運営する「ホームページ」が全盛だった時代から現代に至るまで、多くのサイトに設置された訪問者数を示すツールだ。

 長い歴史を持つ由緒正しきツールであり、情報として分かりやすく設置も容易なことから、ホームページの元祖ステータスと言える。この数値が増加することをモチベーションとしていた管理人も多かったことだろう。

 「現在 02197 HIT THANKS!!」

 「あなたは 000637 匹目のハムちゃんずですv」

 「††† これまで 0018345 匹の迷える子羊がこの館を訪れました †††」


 昔はこのような小粋な文言を前後に付与しているサイトも多かった。管理人のセンスが試される場でもあった。しかしいずれ恥ずかしくなり文言が消えて、無機質なカウンタだけになる……というところまでがテンプレートだ。その姿はまさに迷える子羊だった。


 キリ番が繋ぐ絆

 ビクティニ


 カウンタを語る上で「キリ番」を外すことはできないだろう。訪問者が訪れた際にカウンタが1000、22222、50000などキリのいい数字だった場合、それを報告して盛り上がるといった趣旨である。

 管理人と訪問者を繋ぐ手軽な手段として、多くのホームページに採用されていた文化だ。

 「記念のXXXXヒットは……管理人の自爆でした(藁)という自虐ネタは当時の鉄板であった。

 訪問者から報告があれば「キリ番ゲッター」としてハンドルネームが記録されるサイトもあった。自分の名前が記録されると常連感が出て、何となく嬉しかったものである。

 しかし今考えると、キリ番ゲッターという命名は絶妙にダサい。
 語感がムダ毛カッターと同レベルだ。


 其の者、踏み逃げの大罪により

 踏み逃げ


 逆にキリ番を踏んだのに報告しない、いわゆる「踏み逃げ」をする者も多かった。

 それも無理からぬ話であり、わざわざBBS(掲示板)で報告する手間が煩わしかったり、そもそも大して親交が無いホームページに何かの拍子で迷い込み、意図せずキリ番を踏んでしまうこともあっただろう。

 しかしキリ番によるコミュニケーションを強く推進している個人サイトでは、踏み逃げがあると管理人が血眼でアクセス解析から犯人探しするサイトも一部にあったと聞く。完全にネット版のなまはげである。

 それぐらい当時の踏み逃げは大罪であり、「踏み逃げ禁止」などと報告が義務付けられているサイトもあったほどだ。なんとも過激な時代であった。

 ホームページに関わった者たちのカウンタにまつわる逸話は枚挙に暇がない。


 カウンタに対して紳士たれ

 カウンタ


 私が活動の中心としていたとっとこハム太郎ジャンルのイラストサイトでは、キリ番を取得すると副賞として管理人さんへ「イラストのリクエスト権」(イラリク)が得られるサイトがあった。

 特に人気サイトのイラリク権を巡るキリ番争奪戦では、番号が近くなった際にキーボードのF5を何度も押下(F5連打)することでカウンタを進め、キリ番を取得する者もいた。設定が緩いカウンタではそのような行為が可能だった。

 確かにそれは訪問者の権利であり、不正とは言い切れない。逆に、そうまでして我先にとキリ番やイラリクを争ってもらえるのは管理人冥利と言えるのかもしれない。カウンタの数字が進むのも喜ばしいことだろう。

 だが、個人的に私はF5連打によるキリ番取得には否定的だった。

 別に誰が見ているわけでも無いが、カウンタをいたずらに回す行為は、その個人サイトと管理人さんに対して紳士に向かい合っているとは言えないのではないかと考えていた。
 カウンタは、レストランで言えば入店人数のようなものではないのか?
 男に二言が無いように、二打目も無いのではないか?
 ……などと、しょうもないこだわりを持っていた。

 その是非はさておき、明らかなのは、その哲学のせいで私自身がキリ番の寸前で涙を飲んだ経験ばかりだったというだけだ。

 お気に入りのサイトでXX9999みたいなカウンタを踏んだ時でも、たった1回F5を押すだけのことだが、半泣きで震える右手を左手が制していた。

 結局記憶にある限り、メモリアルなキリ番をゲットしたことは一度もない。

 今やレジェンドとなったかつてのハム太郎サイトの神管理人さんからイラストをもらえなかったのは、今思えば非常にもったいない。変なプライド捨てりゃ良かったと考えているのは秘密である。


 設置しないという選択

 ミステリーちゃん


 カウンタ全盛期、中には「カウンタをあえて設置しない」サイトもあった。

 多くのホームページが当然のようにカウンタを設置している中で、余計なものは不要とばかりにカウンタを設置せずコンテンツオンリーで勝負している管理人さんは、とても職人気質に見えたものだ。

 まるでラーメン屋の親父がチャーハンや冷やし中華に手を出すことなく、「俺が客に出せるのは、魂込めたこの一杯だけよ……」と、ラーメン一本で勝負しているような男気を感じたものだ。(筆者の主観です)

 あの時代にカウンタを設置しないことは相当アバンギャルドであり、私にはとても無理だった。ホームページ初心者の私は、カウンタの魔力に取りつかれていて、日々増える数字を見て、メガネをクイッと上げつつニヤリとほほ笑むことがやめられなかった。

 かつてのカウンタ非設置派の職人さんたちに、当時のウェブサイト群はどのように映っていたのだろうか。その心中は今なお興味深い。


 変則キリ番あれこれ

 なみのりピカチュウ


 キリ番の話に戻るが、何を持ってキリ番とするかはホームページの管理人の裁量次第だった。

 1,000単位が一般的だっただろうか、大手になると5,000や10,000ごとにもなり、中小サイトでは100単位で受け付けているところもあった。

 それに加え、777 2222 など、数字が揃ったものはゾロ番と呼ばれ、広義のキリ番の一種であった。比較的多くのサイトで採用されていた。

 また、12345 56789 などはレン番または階段と呼ばれ、いくつかのサイトでキリ番の一種とされていた。確かに、見た目はレアな感じだ。

 さらに、12321 46864 など、左右対称の番号は鏡に例えてミラ番と呼ばれた。キリ番の中ではマイナーだった。よっぽどカウンタが好きで盛り上がりたいサイトが採用していた。

 ごく一部では、4649(よろしく) 5963(ご苦労さん) など、ゴロ番と呼ばれるものも存在した。ここまで来るとキリ番とは一体何なのか、前提から崩れかけている気がする。異常なまでのキリ番への執着が為せる技だろう。

 このように様々なキリ番が存在した結果、一部のサイトではどうしてもキリ番ゲッターとして名前を刻みたい訪問者が、報告用BBSにて

 「カウンタで 4774 取りました。 ミラ番でキリ番になりますか!?」

 などと鼻息荒く質問をして、

 「えーと、4774はキリ番にはならないですね。ごめんなさい(^^;」

 とあしらわれる実に微笑ましいやり取りも見られた。

 人気サイトのキリ番運用も大変であっただろう。


 


 以上である。忍者カウンタのサービス終了は残念だったが、色々な思い出を振り返ることができた。

 当サイトは古き良き文化であるカウンタとキリ番を今後も応援していきたい。



 なお、当サイトは踏み逃げ厳禁であるためキリ番は必ず報告してください。

 踏み逃げした人は管理人が地の果てまで追いかけて呪います。(2000年代初頭のホームページ的表現)



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